宋詞
留春令·咏梅花
故人溪上,挂愁无奈,烟梢月树。
一涓春水点黄昏,便没顿、相思处。
曾把芳心深相许。
故梦劳诗苦。
闻说东风亦多情,被竹外、香留住。
翻訳
故人のいた渓のほとり。煙る梢と月下の梅の木は、いまはただ愁いを掛けるばかりで、どうすることもできない。細い春水が黄昏を点じても、この相思を置く場所はない。 かつて芳しい心を深く許し合った。昔の夢は心を疲れさせ、詩を作ることさえ苦しい。聞けば、東風もまた情が深く、竹の外の梅の香に引き留められているという。
解説
《留春令·詠梅花》は題名こそ梅を詠む詞であるが、実際には梅を通して故人への相思と旧夢を描いている。史達祖は精緻な咏物詞で知られ、この作品でも梅は単なる花ではなく、故人、昔の約束、記憶の情を宿す存在である。冒頭の「故人溪上」によって、梅の景色はただの自然ではなく、思い出の場所となる。「煙梢月樹」は清幽な月下の梅を描くが、「掛愁無奈」によって、その美しさは愁いを帯びる。 下片の「曾把芳心深相許」は、梅の芳心と人の心を重ねる巧みな表現である。旧夢は心を疲れさせ、詩作さえ苦いものにする。結句「聞説東風亦多情,被竹外、香留住」は余韻が深い。東風は本来流れ去るものだが、梅の香に引き留められる。自分が去れない、忘れられないとは言わず、風が香に留められると書くことで、眷恋の情を美しく表している。
作者紹介
史達祖、字は邦卿、号は梅溪。南宋の詞人で、幕僚として活動したが、官途は大きく開けなかった。しかし詞人として高い名声を得た。とくに咏物詞にすぐれ、花草、鳥、季節の物象を精緻で情感豊かに描くことを得意とした。周邦彦以来の典雅で緻密な作風を受け継ぎつつ、清麗で幽微な独自の世界を作った。《留春令·詠梅花》は、梅を詠みながら故人への思いを重ねた作品であり、史達祖の咏物詞の特色をよく示している。