元曲
鹦鹉曲·山亭逸兴
冯子振
嵯峨峰顶移家住,是个不唧溜樵父。
烂柯时树老无花,叶叶枝枝风雨。
故人曾唤我归来,却道不如休去。
指门前万叠云山,是不费青蚨买处。
翻訳
険しい峰の頂に家を移し、世渡りに疎い木こりの老人となった。 「爛柯」の昔を思わせる木々も老いて花をつけず、枝葉は風雨にさらされている。 昔の友は私に帰って来いと呼びかけたが、私はむしろそのまま世を離れるほうがよいと思った。 門前には幾重にも重なる雲と山がある。この静かな住み処は、一銭も払わずに得られる場所なのだ。
解説
この曲は、山亭に隠棲する心の自由を描いている。高い峰へ家を移すという設定は、俗世から距離を置く姿勢を象徴する。「不唧溜樵父」という自嘲的な言い方には、世間的な才覚や計算を拒む気分がある。「爛柯」の典故は、時間の流れと人事の移ろいを感じさせる。旧友に呼び戻されても、作者は帰らず、雲山の中に身を置く。最後の「不費青蚨」は、富貴では買えない自然の豊かさを示し、元曲らしい口語性と隠逸の趣が結びついている。
作者紹介
馮子振は元代の散曲家・文学者。字は海粟、号に瀛洲洲客・怪怪道人がある。博学で文才にすぐれ、散曲に名を残した。とくに《鸚鵡曲》の連作は、歴史・山水・隠逸・懐古を自在に取り込み、文人的な典故と元曲らしい口語の軽みをあわせ持つ。