元曲
鹦鹉曲·赤壁怀古
冯子振
茅庐诸葛亲曾住,早赚出抱膝梁父。
笑谈间汉鼎三分,不记得南阳耕雨。
叹西风卷尽豪华,往事大江东去。
彻如今话说渔樵,算也是英雄了处。
翻訳
諸葛亮はかつて茅廬に住み、「梁父吟」を口ずさむ隠者であった。 しかしやがて世に請われ、談笑のうちに漢の天下は三つに分かれた。人々は南陽で雨の中を耕していた日々を忘れてしまった。 西風は昔の栄華をすっかり吹き払い、往事は大江とともに東へ流れていった。 今ではその英雄譚も、漁師や樵の語り草となっている。それもまた、英雄の行き着くところなのだろう。
解説
赤壁懐古を題としながら、この曲は戦場そのものよりも諸葛亮の出処進退を通して歴史の無常を描く。茅廬にいた隠者が世に出て、やがて三国鼎立の大勢を動かす。その巨大な変化を「笑談間」に収めるところに散曲の軽やかな圧縮がある。後半は「西風」「大江」によって栄華の消滅を示し、英雄の名もついには漁樵の語り草となる。功名への冷静な視線と、歴史への深い感慨が同居する一首である。
作者紹介
馮子振は元代を代表する散曲家の一人で、歴史典故と口語的表現を自在に結びつけた。短い曲の中に懐古、隠逸、世態への感慨を凝縮する手腕にすぐれる。