元曲
普天乐(一)
滕宾
柳丝柔,莎茵细。
数枝红杏,闹出墙围。
院宇深,秋千系。
好雨初晴东郊媚,
看儿孙月下扶犁。
黄尘意外,
青山眼里,
归去来兮。
翻訳
柳の糸は柔らかく、草は細やかに茂る。数枝の紅杏が、にぎやかに塀の外へ咲き出している。庭は奥深く、秋千が結ばれている。よい雨が晴れたばかりの東郊は美しく、月下に子や孫が犂を支える姿が見えるようだ。俗世の塵は思いの外にあり、青山は目の中にある。帰り去ろうではないか。
解説
この曲は、春景の中に隠逸への願いを重ねた作品である。柔らかな柳、細い草、紅杏、深い庭、秋千といった景物は、穏やかな生活感を作る。「好雨初晴東郊媚」から視線は郊外へ広がり、月下に犂を支える子孫の姿によって、帰隠の理想が具体化される。結句の「黄塵」は俗世の名利、「青山」は自然と安住の象徴である。これは逃避ではなく、名利を見切ったうえでの帰去である。