元曲
寿阳曲·潇湘夜雨
马致远
渔灯暗,
客梦回,
一声声滴人心碎。
孤舟五更家万里,
是离人几行清泪。
翻訳
漁火は暗く、旅人は夢から覚める。雨の滴る音は一声ごとに人の心を砕く。五更の孤舟にあって、故郷は万里のかなた。この瀟湘の夜雨は、まるで離人が流す幾筋もの清い涙のようである。
解説
「瀟湘夜雨」は、馬致遠の旅愁を凝縮した小令である。暗い漁火、客の夢、夜雨、孤舟、万里の故郷が、五更のひと時に集められている。「漁灯暗」は視覚的な寂しさを作り、「客夢回」は夢から現実へ引き戻される瞬間を示す。「一声声滴人心碎」は、雨音をそのまま心の痛みに変える表現である。中心は「孤舟五更家万里」で、孤独な場所、夜明け前の時間、遠い故郷への思いが一つになる。最後に雨は離人の涙となり、景色と感情が完全に重なる。
作者紹介
馬致遠は元代を代表する雑劇作家・散曲作家で、旅愁、秋思、隠逸、人生の無常を清疎な言葉で表すことに優れた。