元曲
黑漆弩·村居遣兴
刘敏中
长巾阔领深村住,
不识我、唤作伧父。
掩白沙翠竹柴门,
听彻秋来夜雨。
闲将得失思量,
往事水流东去。
便宜教画却凌烟,
甚是功名了处。
翻訳
長い頭巾にゆったりした襟の衣をまとい、私は奥深い村に住んでいる。人々は私を知らず、ただ田舎者の老人と呼ぶ。白い砂と青い竹のあいだで柴の門を閉ざし、秋の夜雨を夜通し聞く。暇にまかせて得失を思い量れば、過ぎたことは水のように東へ流れていった。たとえ凌煙閣に肖像を描かれるほどの功名があったとしても、それが何であろう。功名など、結局はそこに尽きるだけである。
解説
この小令は隠棲を歌っているが、単なる田園趣味ではない。そこには功名の世界を経た者の静かな反省がある。「長巾闊領深村住」は、世俗から退いた姿を描く。「不識我、喚作傖父」によって、過去の名や身分は消え、作者はただ村の老人として見られる。白沙、翠竹、柴門、秋の夜雨は、官界から切り離された清冷な空間を作る。後半の「閑將得失思量」から、風景は人生の省察へ変わる。往事は東へ流れる水のように戻らない。結びの「凌煙」は功臣の肖像を掲げた凌煙閣を指し、最高の名誉の象徴である。しかし作者は、それさえも結局は功名の終着にすぎないと見る。声高な否定ではなく、夜雨の静けさの中で功名を見切るところに、この曲の深さがある。
作者紹介
劉敏中は元代の文学者・散曲作家で、字は端甫、済南章丘の人。翰林学士、集賢学士などを歴任し、文章と詩詞で知られた。彼の散曲には、士大夫が晩年に世事を振り返るような落ち着いた視線がある。華美さよりも、淡泊さ、清峻さ、人生への深い省察を重んじた作風である。