元曲
一半儿 · 题情(一)
王和卿
鸦翎般水鬓似刀裁,
小颗颗芙蓉花额儿窄。
待不梳妆怕娘左猜。
不免插金钗,
一半儿鬅松一半儿歪。
翻訳
烏の羽のように黒く艶やかな鬢は、刀で裁ったように整っている。小さな芙蓉の花飾りが、狭い額に貼られている。身支度をしないでいようと思ったが、母に変に勘ぐられるのが怖い。仕方なく金の簪を挿したものの、髪は半分ふわりと乱れ、半分は斜めに傾いている。
解説
この曲は、恋をしている女性の化粧と髪の乱れを通して、その心の動揺を描いた作品である。直接に恋や相思を語るのではなく、身支度の細部から心理を見せている。「鸦翎般水鬓似刀裁」は、女性の鬢の美しさを描く。烏の羽のように黒く艶があり、刀で裁ったように整っている。ここには若い女性の清潔で美しい姿がある。「小颗颗芙蓉花额儿窄」は、額の花飾りを描く。小さな花飾りと狭い額という表現には、可愛らしさと繊細さがある。元曲らしい口語的で親しみやすい描写である。しかし「待不梳妆怕娘左猜」で、単なる美人描写から心理描写へ移る。彼女は心に恋の悩みがあるため、身支度をする気になれない。しかし、身支度をしなければ母に怪しまれる。ここに少女らしい秘密と不安がある。「不免插金钗」は、仕方なく普段通りに見せようとする行為である。けれども、心が乱れているため、外見も完全には整わない。最後の「一半儿鬅松一半儿歪」は非常に巧みである。髪が半分乱れ、半分傾いているという描写は、単に髪型の失敗ではない。彼女の心の落ち着かなさが、そのまま髪に現れている。この曲の面白さは、恋する女性の心理を大げさな言葉ではなく、梳妆の一瞬で描いているところにある。髪の乱れが、そのまま恋心の乱れになっている。
作者紹介
王和卿は元代初期の散曲家で、大名の人。生没年は詳しく分かっていない。関漢卿と同時代の人物とされ、性格は洒脱で諧謔に富んでいた。作品には市井生活、男女の情、風刺、戯れの気分を描いたものが多い。言葉は口語的で生き生きとしており、短い曲の中で人物の表情や心理を巧みに表す。《一半児 · 題情》の連作では、恋する女性の恥じらい、相思、恨み、心の揺れが細やかに描かれている。