元曲

阳春曲 · 春景(三)

Yáng chūn qǔ · Chūn jǐng (sān)

胡祗遹

Hú Zhīyù

Yī lián hóng yǔ táo huā xiè,

一帘红雨桃花谢,

shí lǐ qīng yīn liǔ yǐng xié.

十里清阴柳影斜。

Luòyáng huā jiǔ yī shí bié.

洛阳花酒一时别。

Chūn qù yě,

春去也,

xián shà jiù fēng dié.

闲煞旧蜂蝶。


翻訳

一すじの紅い雨のように、桃の花が散り、十里にわたる清らかな木陰には、柳の影が斜めに伸びている。洛陽で花を賞し酒を飲む楽しみも、ひととき別れを告げる。春は去ってしまった。昔から花を追って忙しかった蜂や蝶も、すっかり暇になってしまった。

解説

この曲は、春が終わり、花が散っていく景色を描いた作品である。前の二首が晴れた春景と春眠ののどかさを描いていたのに対し、この一首は惜春の気分が強い。 「一帘红雨桃花谢」は、桃の花が赤い雨のように散る様子を表す。美しい比喩であるが、その美しさの中に、すでに衰えと別れが含まれている。花が最も鮮やかに見える時、それは枝を離れて散る時でもある。 「十里清阴柳影斜」は、花が散った後の景色である。桃花の華やかさは去り、柳の緑陰が広がる。春は花の季節から、緑陰の季節へ移っていく。 「洛阳花酒一时别」は、自然だけでなく、人間の遊楽も終わることを示す。洛陽は花見で有名な土地であり、「花酒」は春の賞花と宴飲を象徴する。春が去れば、花見の楽しみも一時終わる。 「春去也,闲煞旧蜂蝶」は、軽い言い方の中に寂しさがある。花を追っていた蜂や蝶は、花がなくなると暇になってしまう。蜂蝶の「閑」は、春の賑わいが消えたことを示している。 この曲は、春の終わりを重く嘆くのではなく、散る花、伸びる柳影、別れる花酒、暇になった蜂蝶によって、静かに描いている。そのため、余韻が柔らかく、淡い寂しさが残る。

作者紹介

胡祗遹は元代の文学者・政治家で、字は紹開、一説に紹聞、号は紫山。磁州武安の人。元世祖の時代に仕え、翰林応奉文字、太常博士、河東山西道提刑按察副使、済寧路総管、山東西道提刑按察使などを歴任し、清廉で有能な官僚として知られた。著作に『紫山大全集』があり、元代文学や曲壇を研究するうえで重要な資料を残している。散曲は清らかで雅致があり、文人らしい品格と元曲らしい自然な口語感を兼ね備える。