元曲
阳春曲 · 春景(二)
胡祗遹
残花酝酿蜂儿蜜,
细雨调和燕子泥。
绿窗春睡觉来迟。
谁唤起?
窗外晓莺啼。
翻訳
散り残った花は、蜂たちの蜜をゆっくり醸し、細かな雨は、燕が巣を作る泥をやわらかく調えている。緑の窓辺で春の眠りに沈み、目覚めた時にはもう遅い。誰が起こしたのだろう。窓の外で、朝の鶯が鳴いていたのだ。
解説
この曲は、春の朝に目覚める小さな情景を描いた作品である。前の一首が春の外景と春遊びの気分を描いていたのに対し、この一首はより室内的で、静かで柔らかい。 「残花酝酿蜂儿蜜」は、散り残った花がまだ蜜を生み、蜂を養っていることをいう。花はすでに盛りを過ぎているが、そこにはなお生命の働きがある。「酝酿」という語によって、花と蜜の関係がゆっくりとした自然の営みとして描かれている。 「细雨调和燕子泥」は、春雨と燕の巣作りを描く。細い雨が土を湿らせ、燕が巣を作るための泥を調える。雨、土、燕が自然に結びつき、春の生活が始まっている。 「绿窗春睡觉来迟」では、人物が登場する。緑の窓辺で春眠にふけり、目覚めるのが遅くなった。春の眠りの心地よさ、室内の静けさ、外の柔らかな気配が重なっている。 最後の「谁唤起?窗外晓莺啼」は、とても軽やかな結びである。人を起こしたのは人声ではなく、窓外の朝の鶯であった。問いかけの形にすることで、春眠から覚めたばかりのぼんやりした感覚がよく出ている。 この曲の魅力は、春を大きく描かず、残花、細雨、燕泥、緑窓、鶯の声という小さなものの中に春を感じ取っている点にある。静かで、生活感があり、柔らかい春の小品である。
作者紹介
胡祗遹は元代の文学者・政治家で、字は紹開、一説に紹聞、号は紫山。磁州武安の人。元世祖の時代に仕え、翰林応奉文字、太常博士、河東山西道提刑按察副使、済寧路総管、山東東西道提刑按察使などを歴任し、清廉で有能な官僚として知られた。著作に『紫山大全集』があり、元代文学や曲壇を研究するうえで重要な資料を残している。散曲は清らかで雅致があり、文人らしい品格と元曲らしい自然な口語感を兼ね備える。明代の朱権はその詞を「秋潭孤月の如し」と評した。