元曲
小桃红 · 客船晚烟
盍西村
绿云冉冉锁清湾,
香彻东西岸。
官课今年九分办,
厮追攀,
渡头买得新鱼雁。
杯盘不干,
欢欣无限,
忘了大家难。
翻訳
緑の雲のような夕靄がゆっくり立ちのぼり、清らかな入り江を包み込んでいる。香りは東西の岸にまで漂っている。今年の官への租税は九分で済む。人々は互いに呼び合い、追い合い、渡し場で新鮮な魚や雁を買ってきた。杯も皿もまだ空にならず、喜びは尽きることがない。人々はしばし、暮らしの苦しさを忘れている。
解説
この曲は、臨川の夕暮れの水辺と、そこに暮らす人々の小さな楽しみを描いた作品である。元宵の華やかな灯火を描いた「江岸水燈」と比べると、こちらはより日常的で、生活の匂いが濃い。 冒頭の「緑雲冉冉鎖清湾」は、夕靄が水湾を包む様子を描く。「緑雲」は本当の雲というより、煙、水気、岸辺の草木が重なって見える青緑の靄である。「鎖」という字によって、静かな湾が煙に閉じ込められたような印象になる。 「香徹東西岸」は、風景に香りを加える。草木の香り、炊煙、酒食の匂いなどが混じり、江岸全体に生活感を与えている。 「官課今年九分辦」は、急に現実的な民生の話に入る。官課とは官府に納める税であり、今年は九分で済むという。つまり人々の楽しみは、ただ風景が美しいから生まれたのではなく、税の負担が少し軽くなったという現実的な安堵にも支えられている。 「渡頭買得新魚雁」では、渡し場のにぎわいが見える。人々は呼び合い、追い合い、新鮮な魚や雁を買ってくる。これは文人の雅宴ではなく、庶民的な水辺の集まりである。 最後の「忘了大家難」が非常に重要である。人々は楽しんでいる。しかし、それは苦しみがないからではなく、一時的に忘れているだけである。喜びの背後には、生活の難しさが残っている。 この曲のよさは、清らかな景色と庶民の生活を同時に描いている点にある。夕靄、清湾、渡し場、魚、酒、税、喜び、苦しみが短い曲の中にすべて入っている。軽やかだが、現実の重みもある作品である。
作者紹介
盍西村は元代の散曲家で、生平は詳しく分かっていない。一般には盱眙の人とされる。写景の小令にすぐれ、都市、水郷、節令、山水の風景を清新自然な言葉で描いた。また、民間生活の気配を短い作品の中に写し取ることにも長けている。代表作に『小桃紅・臨川八景』があり、臨川のさまざまな景色を小令で詠んでいる。明代の朱権は『太和正音譜』で、その詞を「清風爽籟の如し」と評した。