元曲
四块玉·紫芝路
马致远
雁北飞,人北望,
抛闪煞明妃也汉君王。
小单于把盏呀刺刺唱。
青草畔有收酪牛,
黑河远有扇尾羊,
他只是思故乡。
翻訳
雁は北へ飛び、人もまた北を望む。 明妃は漢の君王に見捨てられたかのように、塞外へ送られた。 若き単于は杯を取り、胡地の調べで歌う。 青草のほとりには乳を搾る牛があり、黒河の遠くには尾を振る羊がいる。 しかし彼女が思うのは、ただ故郷だけである。
解説
この曲は王昭君の出塞故事を用いて、異郷に置かれた人の望郷を描く。冒頭の「雁北飛,人北望」は、雁は北へ帰れるのに、人はただ北を望むだけだという対比で、すでに全篇の哀感を定めている。青草、乳牛、黒河、羊といった塞外の景物は、荒々しい悲劇としてではなく、日常の風景として描かれる。だからこそ最後の「他只是思故乡」が深く響く。暮らすことはできても、心の帰る場所は別にある。馬致遠らしい、短い曲の中に歴史と情感を凝縮した作品である。