元曲
寿阳曲 · 别珠帘秀
卢挚
才欢悦,
早间别,
痛煞煞好难割舍!
画船儿载将春去也,
空留下半江明月。
翻訳
ようやく歓びを得たばかりなのに、もう別れの時が来てしまった。痛ましくて、どうにも断ち切りがたい。美しく飾られた船は、春までも載せて去っていった。あとには、半ばの川に映る明月だけが、むなしく残された。
解説
この曲は、盧摯が元代の名伶・珠簾秀と別れる時に作った送別の小令である。作品は非常に短いが、相聚の喜びから離別の寂しさへの転換が鮮やかである。 「才歡悅,早間別」は、最初から感情の核心を突いている。「才」は、歓びが始まったばかりであることを示し、「早」は、別れがあまりにも早く来たことを示す。喜びは短く、別れは早すぎる。この対比が全曲の基調である。 「痛煞煞好難割捨」は、元曲らしい口語的な表現である。上品に遠回しに言うのではなく、痛い、別れがたい、と直接言う。その率直さが、かえって真情を強く伝えている。 「畫船兒載將春去也」は、この曲で最も重要な句である。画船が載せて去るのは、珠簾秀その人だけではない。彼女と共にあった楽しい時間、明るさ、温かさ、つまり作者にとっての「春」そのものが去ってしまうのである。 「空留下半江明月」は、非常に余韻のある結びである。明月は本来川面全体を照らすはずだが、作者の目には「半江」だけが残る。もう半分の光景は、彼女と共に去ってしまったように感じられる。「空」という字が、別れの後の空虚さをよく表している。 この曲の魅力は、前半の口語的な痛切さと、後半の美しい景物表現が結びついている点にある。人が去り、春が去り、残るのは半江の月だけである。短いながら、離別の寂しさを深く残す作品である。
作者紹介
盧摯は元代の文学者・散曲家で、字は処道、また莘老、号は疏斎。涿郡の人。翰林学士承旨などを務め、元代前期を代表する文人の一人である。詩文と散曲にすぐれ、散曲の作品数も多く、前期元曲作家の中で重要な位置を占める。白朴、馬致遠、珠簾秀らとも交わりがあった。題材は写景、懐古、咏物、隠逸、嘆世、贈別など幅広く、風格は清雅で疎朗、文人的な品格と曲体の自然な流れを兼ね備えている。