元曲
潘妃曲(一)
商挺
带月披星担惊怕,
久立纱窗下。
等候他。
蓦听得门外地皮儿踏,
则道是冤家,
原来风动荼蘼架。
翻訳
月を帯び、星をかぶりながら、胸をどきどきさせて恐れ、長いあいだ紗の窓の下に立っている。彼を待っているのだ。ふと門の外で、地面を踏むような音が聞こえた。あの憎らしくも恋しい人が来たのだと思ったが、実は風が荼蘼の花棚を動かしただけだった。
解説
この曲は、夜に恋人を待つ少女の心理を描いた小品である。短い作品だが、待つ不安、期待、聞き違い、落胆が非常に自然に描かれている。 「月を帯び、星をかぶる」という表現から、時刻はすでに夜深いことが分かる。少女はその中で、恐れながらも恋人を待っている。家の人に知られる不安もあれば、恋人が来ないかもしれない不安もある。 「紗窓の下に長く立つ」は、待つ時間の長さを示す。窓は内と外の境であり、彼女はその境界に立って、外から来るはずの人を待っている。 「等候他」は非常に率直な言い方である。詩的に飾らず、ただ「彼を待っている」と言うところに、元曲らしい口語的な親しみがある。 突然聞こえた足音らしき音によって、少女の心は一気に動く。「冤家」は恋人を指す愛称で、愛しさと恨めしさが混じった言葉である。彼女は彼が来たと思い、期待する。 しかし最後に、それは人の足音ではなく、風が荼蘼の棚を動かした音だったと分かる。ここに小さな反転がある。待つ人は、風の音さえ恋人の足音に聞こえてしまう。その錯覚が、少女の恋心の深さをよく表している。 この作品の魅力は、大げさな言葉を使わず、夜の窓辺の一瞬だけで恋の不安と期待を描いているところにある。小さな生活場面が、そのまま一つの恋の劇になっている。
作者紹介
商挺は元代の散曲家・政治家で、字は孟卿、一説に夢卿、号は左山老人。曹州済陰の人。商衟の甥にあたり、金末元初には元好問、楊奐らと交わった。のち元に仕え、参知政事、枢密副使などを歴任した。現存する散曲は多くないが、《潘妃曲》の連作が知られ、男女の逢瀬、相思、待つ心、四季の景色などを明るく生き生きとした口語で描いた。