元曲
干荷叶(一)
刘秉忠
干荷叶,
色苍苍,
老柄风摇荡。
减清香,
越添黄。
都因昨夜一场霜,
寂寞在秋江上。
翻訳
枯れた蓮の葉、その色は暗く青ざめ、老いた茎は風に揺れている。清らかな香りは減り、黄色みばかりが増していく。すべては昨夜の一度の霜のためである。それは秋の川の上に、寂しく立っている。
解説
この曲は、秋の川辺に残る枯れた蓮の葉を詠んだ短い散曲である。言葉は少ないが、盛りを過ぎたものの寂しさと、生命が衰えていく感覚を非常によく表している。 冒頭の「干荷葉,色蒼蒼,老柄風揺蕩」は、枯れた蓮の葉の姿をそのまま描く。かつては青く香り高かった蓮も、今は色が暗く、茎も老いて、風に揺れるだけである。「老柄」という言葉によって、植物の姿が人間の老いにも重なって見える。 「減清香,越添黄」は非常に鋭い表現である。香りは減っていき、黄色は増していく。生命の衰えが、香りと色の変化として示されている。ここには、時間が少しずつものを変えていく感覚がある。 「都因昨夜一場霜」は、その変化の原因を示す。霜は秋の寒さであり、生命を一気に衰えさせる力である。一夜の霜によって、蓮の残っていた生気はさらに失われる。 最後の「寂寞在秋江上」は、全曲の感情を決定する句である。枯れた蓮の葉は、ただ枯れているだけではなく、秋の川の上で孤独に残っている。風、霜、秋江、枯葉が一つになって、深い寂しさを生む。 この曲は、直接人生を語らない。しかし、読む者は自然に、人の盛衰や老いを思う。かつて香りと色を持っていたものが、今は風の中に揺れている。その静かな哀感こそが、この作品の魅力である。
作者紹介
劉秉忠は元代の政治家・文学者で、字は仲晦、初名は劉侃、号は蔵春散人。邢州の人。若いころは僧となり、法名を子聡といったが、のち元世祖フビライに重用され、元朝の制度整備や都城計画に関わり、太保・参領中書省事に至った。儒・仏・道に通じ、詩文と散曲にもすぐれた。現存する散曲は多くないが、『干荷葉』は特に有名で、簡潔な言葉の中に人生の盛衰を深く感じさせる。