唐詩
送元二使安西
渭城朝雨浥轻尘,
客舍青青柳色新。
劝君更尽一杯酒,
西出阳关无故人。
翻訳
渭城の朝の雨が、軽く舞う塵をしっとりと濡らした。旅舎のそばの柳は青々として、色も新しい。どうかもう一杯、酒を飲み干してほしい。西へ向かって陽関を出れば、もはや古い友に会うことは難しいのだから。
解説
『送元二使安西』は唐代送別詩の代表作であり、後に『陽関三畳』として歌われたことでも知られる。前半は、渭城の朝雨と旅舎の柳を描く。雨は軽い塵をしっとりと鎮め、柳の青さを新しく見せている。しかし、中国古典詩において柳は別れと深く結びつくため、この清新な景色の中にはすでに別離の気配がある。後半の「勧君更尽一杯酒」は、別れの言葉を一杯の酒に凝縮する句である。「西のかた陽関を出づれば故人無からん」と続くことで、陽関の向こうがいかに遠く、友に会いがたい場所であるかが示される。王維は悲しみを大きく叫ばず、酒を勧める静かな仕草によって深い惜別の情を表している。
作者紹介
王維は盛唐を代表する詩人・画家・音楽家で、字は摩詰。彼の詩は、静かな意境、簡潔な言葉、絵画的な構成で知られている。山水や旅の景を人の感情と自然に結びつけることに優れ、送別詩でも大きく嘆くのではなく、景物や仕草、余韻によって別れの心を表す。『送元二使安西』はその代表作であり、朝雨、柳色、一杯の酒によって、遠い辺地へ向かう友への深い惜別を描いている。