唐詩
送友人
薛涛
水国蒹葭夜有霜,
月寒山色共苍苍。
谁言千里自今夕,
离梦杳如关塞长。
翻訳
水辺の国では、夜になると蘆や荻に霜が降りる。寒い月の光と山の色は、ともに青くかすんでいる。千里の隔たりが今夜から始まるだけだと、誰が言えるだろう。別れた後の夢さえも、関塞の道のように遠く長く、かすんでいく。
解説
薛濤の『送友人』は、冷たい色調で別れを描く詩である。「水国」「蒹葭」「夜霜」「月寒」「山色」といった語は、湿った寒さと遠い広がりを感じさせる。送別の場面そのものを細かく描くのではなく、風景全体に別れの気配を宿しているところが特徴である。「共に蒼蒼たり」という表現によって、月の光、山の色、そして人の心が一つの青くかすんだ世界に溶け合う。後半では、今夜から千里の隔たりが始まるのではなく、その遠さはすでに心の中にあったのだと感じさせる。結びの「離夢杳として関塞の長きがごとし」は、夢でさえ距離を越えられない悲しみを表す。繊細でありながら、余韻の深い送別詩である。
作者紹介
薛濤は中唐の著名な女性詩人で、字は洪度。長安の出身で、のちに蜀の地で長く暮らした。才気に富み、元稹、白居易、劉禹錫ら当時の文人とも交流があった。詩風は清麗で繊細であり、短い篇の中に深い情感と広がりのある景を表すことに優れている。また、彼女にちなむ「薛濤箋」は後世、文人趣味の象徴ともなった。『送友人』は、寒い月と水辺の風景を通して別れの遠さを描いた代表的な佳作である。