唐詩
送杜少府之任蜀州
城阙辅三秦,风烟望五津。
与君离别意,同是宦游人。
海内存知己,天涯若比邻。
无为在歧路,儿女共沾巾。
翻訳
長安の城郭は三秦の地に守られ、風と霞の向こうに蜀の五津を望む。 君と別れる思いは、私にもよく分かる。私たちはともに、故郷を離れて仕官の旅にある者だからである。 天下のうちに真の友がいるならば、たとえ天涯に離れても、隣人のように近く感じられる。 分かれ道で、子どものように涙を流し、手巾を濡らすことはやめよう。
解説
この詩は唐代送別詩の代表作である。冒頭では、長安の雄大な城郭と、遠い蜀地の五津が対置され、別れの距離の大きさが示される。友人はただ近くへ行くのではなく、風煙の向こうにある遠方へ赴くのである。 「与君離別意,同是宦遊人」では、詩人自身もまた仕官のために故郷を離れている者として、友人の思いを共有する。ここにこの詩の情の深さがある。慰める側と慰められる側ではなく、同じ漂泊の境遇にある者同士の別れなのである。 「海内存知己,天涯若比隣」は、友情が空間的距離を越えることを詠んだ名句である。遠く離れても、心を知る友がいるなら、天涯も隣のように近く感じられる。これは悲しみを否定する言葉ではなく、深い友情があるからこそ可能な開豁である。 結びでは、分かれ道で涙にくれることを戒める。王勃らしい若々しい気概があり、別離の情を沈痛なものに閉じ込めない。だからこの詩は、古典的な送別の情を持ちながら、同時に明るく広い精神を感じさせる。
作者紹介
王勃は初唐の文学者で、字は子安。楊炯、盧照隣、駱賓王とともに「初唐四傑」と称される。若くして才名を得、詩文には広い空間感覚と若々しい気概が見られる。六朝以来の華麗な文風を受け継ぎながら、唐代文学らしい健やかで力強い表現へと開いていった人物である。代表作に『滕王閣序』があり、『送杜少府之任蜀州』は送別詩の名篇として広く知られている。