唐詩
送别
下马饮君酒,
问君何所之。
君言不得意,
归卧南山陲。
但去莫复问,
白云无尽时。
翻訳
馬を下りて、一杯の酒を飲んでほしい。私は君に、どこへ行くのかと尋ねる。君は、世に志を得られなかったので、南山のほとりへ帰って隠れ住むのだと言う。それなら行くがよい。私はもう問い重ねまい。白雲は果てしなく続いている。
解説
王維の『送別』は、別れの詩でありながら、激しい嘆きがない。冒頭の「下馬飲君酒」は、馬を下りて一杯の酒を飲むという簡素な場面である。「君に問う、どこへ行くのか」という問いには、友への静かな気遣いがある。友は「不得意」と答え、世に志を得られず、南山のほとりへ帰って隠棲すると語る。王維はそれ以上引き止めず、「但だ去れ、復た問うことなかれ」と言う。これは冷たさではなく、相手の選択を受け入れる深い理解である。結びの「白雲無尽時」は、失意の帰隠を自然の広がりの中に溶かしている。白雲は隠逸と自由の象徴であり、この詩に静かな余韻を与えている。
作者紹介
王維は盛唐を代表する詩人で、絵画や音楽にも優れていた。彼の詩は、簡潔な言葉で静かな画面を作り、山水・田園・隠逸・送別を詠むことに長けている。官僚として生きながらも、仏教的な静けさや自然への帰依を深く持っていたため、その詩には世俗の功名から距離を置くまなざしがある。『送別』も、友人の失意と帰隠を静かに受け止める王維らしい作品である。