唐詩
九月九日忆山东兄弟
独在异乡为异客,
每逢佳节倍思亲。
遥知兄弟登高处,
遍插茱萸少一人。
翻訳
ひとり異郷にいて、私はよそ者となっている。佳節を迎えるたびに、家族への思いはいっそう深くなる。遠くから思い浮かべる。兄弟たちは重陽の日に高い所へ登り、みな茱萸を挿しているだろう。ただ、その中に私一人だけがいない。
解説
王維が若いころに作ったこの詩は、望郷の詩として最もよく知られる作品の一つである。第一句では「異郷」「異客」と重ねることで、故郷から離れた孤独が強調される。第二句の「每逢佳節倍思親」は、祭日という本来なら家族が集まる時間だからこそ、親しい人への思いがいっそう深くなることを示している。後半では、自分の孤独を直接語らず、兄弟たちが重陽の日に高い所へ登り、茱萸を挿している情景を遠くから想像する。そして最後に「少一人」と言う。その一人とは詩人自身である。自分の不在を家族の場面の中の空白として描くところに、この詩の静かな力がある。
作者紹介
王維は盛唐を代表する詩人であり、画家・音楽家としても知られる。字は摩詰。静かな山水描写と禅的な趣をもつ詩によって、後世「詩仏」と称された。山水田園詩で特に高い評価を受けるが、送別や望郷、親族への思いを詠んだ作品にも深い感情がある。『九月九日憶山東兄弟』は若年の作でありながら、簡潔な言葉で家族への思慕と異郷の孤独を表す名篇である。