唐詩
寒食
韩翃
春城无处不飞花,
寒食东风御柳斜。
日暮汉宫传蜡烛,
轻烟散入五侯家。
翻訳
春の都には、花びらの舞わない所がない。 寒食の東風は、宮中の柳を斜めに吹きなびかせる。 日暮れになると、宮中から蝋燭が下賜され、 その淡い煙は、寵愛を受ける侯たちの家へと流れ込んでいく。
解説
『寒食』は、表面上は寒食節の都の春景を詠んだ詩である。しかし、その静かな描写の奥には、宮廷の特権に対する含みのある批判がある。前半では、花びらが都じゅうに舞い、東風が宮中の柳をなびかせる。明るく柔らかな春の景色である。ところが後半では、視線が宮廷と権貴の家へ移る。本来、寒食の日には火を用いないはずなのに、宮中から蝋燭が下賜され、その煙が五侯の家に流れ込む。詩人は直接に非難しない。ただ「伝えられる蝋燭」と「流れ込む煙」を描くだけで、恩寵と身分差を浮かび上がらせる。美しい春景の中に、冷ややかな風刺がひそむ作品である。
作者紹介
韓翃は唐代の詩人で、大暦十才子の一人に数えられる。字は君平。送別、旅情、宮廷、時事を題材とする詩を多く残し、清らかで含みのある作風を特徴とする。代表作『寒食』は、明るい春景の中に権貴への風刺を潜ませた七言絶句であり、唐詩の名篇として広く知られている。