唐詩
芙蓉楼送辛渐
王昌龄
寒雨连江夜入吴,
平明送客楚山孤。
洛阳亲友如相问,
一片冰心在玉壶。
翻訳
寒い雨が川面に連なり、夜のうちに呉の地へ入ってきた。夜明けに客を見送ると、楚の山だけが孤独に見える。洛陽の親しい人々が私のことを尋ねたなら、こう伝えてほしい。私の心は、玉壺の中の一片の氷のように清らかである、と。
解説
『芙蓉楼送辛漸』は送別の詩であると同時に、自らの心の清らかさを示す詩でもある。前半では、寒い雨、川、夜、呉の地、楚山といった景物が、冷たく孤高な雰囲気を作っている。「寒雨連江夜入呉」は広がりのある景でありながら、心の寒さも含んでいる。「平明送客楚山孤」では、送別後の孤独が遠い山に凝縮される。後半の「一片冰心在玉壺」は、詩全体の中心である。氷の心は清く透明であり、玉壺は汚れなき器である。詩人は自分を弁明するのではなく、美しい比喩によって人格の高潔さを示す。清冷な景と清らかな心が一つになった名篇である。
作者紹介
王昌齢は盛唐の七言絶句を代表する詩人であり、短い詩形の中に広い情景と強い感情を凝縮することに優れていた。辺塞詩で名高いが、送別詩や宮怨詩にも繊細な名作が多い。『芙蓉楼送辛漸』は、冷たい景色と高潔な心を結びつけた作品で、「一片冰心在玉壺」という句によって、清らかな人格を象徴的に表している。