唐詩
登科后
孟郊
昔日龌龊不足夸,
今朝放荡思无涯。
春风得意马蹄疾,
一日看尽长安花。
翻訳
かつての鬱屈した日々など、もう語るに足りない。 今朝、科挙に及第して、心は解き放たれ、思いは果てしなく広がる。 春風の中、意気揚々と馬を走らせると、馬蹄もひときわ速い。 一日のうちに、長安の花をすべて見尽くすかのようである。
解説
『登科後』は、科挙に及第した直後の歓喜を率直に詠んだ詩である。孟郊は長く不遇と貧困を味わい、中年になってようやく及第した。そのため「昔日龌龊不足夸」は、過去を軽く忘れる言葉ではなく、鬱屈から解き放たれた瞬間の叫びである。「今朝放蕩思無涯」の「放蕩」は、放縦ではなく、心が大きく解放された状態をいう。後半の「春風得意馬蹄疾,一日看尽長安花」は、喜びを速度と視覚に変えた名句である。春風は季節の風であると同時に、人生が開けた象徴でもある。詩は単純で明るいが、その単純さこそが力となり、一朝にして報われた人間の高揚を生き生きと伝えている。
作者紹介
孟郊は唐代の詩人で、字は東野。貧困、苦吟、親情、人生の不遇を詠む作品が多く、硬く痩せたような詩風で知られる。賈島と並んで「郊寒島瘦」と称されることもある。長く科挙に苦しみ、生活も恵まれなかったため、『登科後』の明るい歓喜は彼の作品の中で特に印象的である。不遇を経たからこそ、この詩の得意と解放感は深く響く。