唐詩
采莲曲
菱叶萦波荷飐风,荷花深处小船通。
逢郎欲语低头笑,碧玉搔头落水中。
翻訳
菱の葉は波にまとわり、蓮の葉は風に揺れ、蓮の花の奥を小舟が通っていく。 蓮を採る娘は思う人に出会い、話しかけようとしてうつむき微笑む。その拍子に、碧玉のかんざしが水の中へ落ちてしまう。
解説
『采蓮曲』は、蓮を採る水辺の情景と若い女性の恋心を、短い一瞬の動作で描いた詩である。前半では、菱の葉、波、蓮の葉、風、蓮の花、小舟が現れ、夏の水郷の明るく軽やかな景色が作られる。「縈」「飐」「通」といった語によって、水の動きと風の揺れが感じられる。 後半では、娘が思う人に出会う。話しかけたいが、うつむいて笑う。そのしぐさだけで、恥じらいと喜びが伝わる。最後に碧玉のかんざしが水に落ちることで、その心の揺れが目に見える出来事となる。 この詩は恋を大げさに語らない。ただ、出会い、微笑み、かんざしが落ちるという細部だけを描く。そのため、かえって自然で愛らしい。白居易の平明な言葉が、生活感と詩情をよく結びつけている。
作者紹介
白居易は唐代を代表する詩人で、字は楽天、号は香山居士。平明で流れるような言葉を用い、現実生活や人間の感情を分かりやすく描くことに優れた。社会性のある詩や長篇叙事詩で知られる一方、『采蓮曲』のように日常の一瞬を軽やかに描く小品にも巧みである。