唐詩
别董大
高适
千里黄云白日曛,北风吹雁雪纷纷。
莫愁前路无知己,天下谁人不识君。
翻訳
千里にわたって黄雲が広がり、白い太陽はかすんで暗い。北風が雁を吹き送り、雪はしきりに降っている。 これから行く道に知己がいないなどと憂えることはない。天下に、君を知らない者がいるだろうか。
解説
『別董大』は、高適の送別詩の中でも特に有名な作品である。前半では、黄雲、曇った白日、北風、雁、雪によって、荒涼とした別れの風景が描かれる。そこには寒さと遠さがあり、旅立つ人の前途の厳しさが感じられる。 しかし後半で詩の調子は大きく変わる。「莫愁前路無知己,天下誰人不識君」は、相手の名声と人柄を信じて励ます言葉である。これは単なる慰めではなく、友人に対する深い信頼の表明である。 この詩の力は、寒々しい景色と熱い励ましの対比にある。前二句が厳しければ厳しいほど、後二句の言葉はいっそう強く響く。高適らしい率直で雄健な詩風が、短い四句の中に凝縮されている。
作者紹介
高適は唐代の著名な辺塞詩人で、岑参とともに「高岑」と称される。辺塞、軍旅、離別、仕官の志、人生の困難を多く詠み、詩風は質朴で力強く、沈着な気概を持つ。若いころは不遇であったが、のちに官途につき、その人生経験が詩に豪放さと現実感を与えている。『別董大』はその送別詩の代表作である。