宋詞

相思令·蘋满溪

Xiāng sī lìng·píng mǎn xī

张先

Zhāng xiān

Píng mǎn xī, liǔ rào dī。

蘋满溪,柳绕堤。

Xiāng sòng xíng rén xī shuǐ xī。

相送行人溪水西。

Huí shí lǒng yuè dī。

回时陇月低。

Yān fēi fēi, fēng qī qī。

烟霏霏,风凄凄。

Zhòng yǐ zhū mén tīng mǎ sī。

重倚朱门听马嘶。

Hán ōu xiāng duì fēi。

寒鸥相对飞。


翻訳

小川には蘋が満ち、柳が堤をめぐっている。私は旅立つ人を送り、溪水の西まで歩いて行った。帰る時には、丘の月が低く沈んでいる。煙は霏々と立ちこめ、風は凄々としている。ふたたび朱の門に寄りかかり、遠く馬のいななきを聞く。寒い鴎が向かい合うように飛んでいく。

解説

この小令は、別れそのものよりも、別れの後に残る余情を描いている。短い作品だが、感情の流れはきわめて完整である。冒頭の蘋と柳は、送別の道を柔らかく、また名残惜しく彩る。旅人を溪水の西まで送った後、詞は旅人の遠ざかる姿ではなく、送った者がひとり帰る時の低い月を写す。下片の「煙霏霏,風凄凄」は、音の反復によって寒く霞んだ空気を生む。朱門に倚って馬のいななきを聞くところには、別れが終わってもなお心がそこから離れない様子がある。寒鴎が相対して飛ぶ姿は、人の孤独をいっそう際立たせる。相思という語を多く言わず、帰路、月、風煙、馬声の中に余韻を残している。

作者紹介

張先は字を子野という北宋の詞人で、烏程の人。安陸知県などを務め、晩年は湖州・杭州のあたりに退いた。小令と慢詞にすぐれ、光、影、帘幕、柳、月色など柔らかな景物を通して微妙な情を描くことを得意とした。「影」の字を巧みに用いたため「張三影」と称された。彼の詞は、晏殊・欧陽修の清雅な士大夫詞と、柳永に近い都市的歌唱文化との間に位置している。