宋詞
浣溪沙·麻叶层层苘叶光
Su Shi
麻叶层层苘叶光,谁家煮茧一村香。
隔篱娇语络丝娘。
垂白杖藜抬醉眼,捋青捣麨软饥肠。
问言豆叶几时黄。
翻訳
麻の葉は幾重にも重なり、苘麻の葉は光を受けて輝いている。どこの家だろう、繭を煮る香りが、村じゅうに漂っている。垣根の向こうからは、糸を取る若い女たちのやわらかな話し声が聞こえる。白髪の老人は藜の杖をつき、酒に酔った目を上げてあたりを見る。まだ青い穂をしごき取り、炒り粉に搗いて、飢えた腹を少しなだめる。そして尋ねる。豆の葉は、いつになれば黄ばみ、収穫の時を迎えるのだろうか。
解説
この詞は、蘇軾が黄州に左遷されていた時期に作った『浣溪沙』連作の一首で、農村の暮らしと農事を描いている。花や月だけを詠むのではなく、麻、苘麻、繭を煮る匂い、糸を取る女、白髪の老人、飢え、豆の葉といった、生活に密着したものが詞の中に入っている。前半では、初夏の農村の様子が描かれる。「誰家煮繭一村香」は、どこかの家で繭を煮ている匂いが村全体に広がるという表現で、農桑の営みと村の生活感をよく伝えている。後半では、白髪の老人が登場する。彼は杖をつき、酒気を帯びた目を上げる。そして、まだ青い穂を取って粉にし、飢えをしのぐ。ここで田園風景の明るさの裏にある貧しさが見えてくる。最後の「豆葉幾時黄」は、豆がいつ熟すのかを問う言葉である。これは単なる季節の質問ではない。食べ物が尽きかけ、次の収穫を待つ切実な気持ちが込められている。この詞のすぐれた点は、農村を美化しすぎないところにある。そこには香り、声、植物の光がある一方で、飢えと待つ時間もある。蘇軾はそれを自然な筆致で描いている。
作者紹介
蘇軾は北宋の文学者、政治家、書画家で、字は子瞻、号は東坡居士。眉州眉山の人。「唐宋八大家」の一人であり、宋詞を大きく発展させた重要な人物である。彼は詞の題材を広げ、恋愛や宴席だけでなく、人生、歴史、山水、政治、農村生活まで詠み込んだ。詞風は豪放でありながら、清新で細やかな作品も多い。代表作に『念奴嬌・赤壁懷古』『水調歌頭・明月幾時有』『江城子・乙卯正月二十日夜記夢』などがある。