詩経
郑风·遵大路
佚名
遵大路兮,掺执子之祛兮。
无我恶兮,不寁故也。
遵大路兮,掺执子之手兮。
无我魗兮,不寁好也。
翻訳
大きな道を行きながら、私はあなたの袖をつかむ。どうか私を憎まないで。昔からの情けをそんなに早く断たないで。 大きな道を行きながら、私はあなたの手を取る。どうか私を嫌わないで。かつての好意をそんなに早く断たないで。
解説
「遵大路」は、別れの瞬間に相手を引き止める短い詩である。背景はほとんど語られない。なぜ二人が離れようとしているのか、誰に原因があるのかも分からない。ただ、大路の上で相手の袖をつかみ、手を取って、旧情を断たないでほしいと願う声だけが響く。 「无我恶」「无我魗」は、自分が嫌われ、見捨てられることへの恐れを表す。「不寁故」「不寁好」は、昔からの情や好意をそんなに急に絶たないでほしいという願いである。反復は短いが、そのぶん切迫感が強い。 大路は本来、広く開かれた場所である。しかしこの詩では、別れが決定的になる場所となる。袖をつかむ、手を取るという親密な動作が、ここではかえって絶望的に感じられる。わずかな句で人間関係の破局を描く、『詩経』らしい凝縮された作品である。
作者紹介
「鄭風・遵大路」は『詩経・国風』に収められた作者不詳の作品である。国風の詩には、長い物語を語るのではなく、一つの動作や一瞬の感情を切り取るものが多い。「遵大路」はその典型であり、別れようとする相手の袖と手をつかむ場面だけを残すことで、古代の離別の痛みを直接に伝えている。