詩経
郑风·山有扶苏
佚名
山有扶苏,隰有荷华。
不见子都,乃见狂且。
山有桥松,隰有游龙。
不见子充,乃见狡童。
翻訳
山には扶蘇の木があり、低い湿地には蓮の花が咲いている。子都のような美男子には会えず、かわりにこの軽々しい男に会ってしまった。 山には高い松があり、低い湿地には水辺の草が生えている。子充のような美男子には会えず、かわりにこの狡い若者に会ってしまった。
解説
「山有扶蘇」は、戯れと親しみを含んだ恋歌である。冒頭では、山の扶蘇、湿地の蓮、山の高い松、水辺の草が対になって描かれる。自然の景は明るく整っているが、その後すぐに詩は人物への軽い不満へと転じる。 「子都」「子充」は美男子の名として用いられ、「狂且」「狡童」は相手をからかうような言葉である。語り手は、理想の美男子に会えなかったと言いながら、実際には目の前の相手を親しげに揶揄している。そこには本当の嫌悪ではなく、恋人同士の軽い嗔りと戯れがある。 この詩の面白さは、明麗な自然描写と、少し滑稽な人物評との対比にある。厳粛な誓いではなく、日常の親密な言葉の中に、恋愛の軽やかな気配が表れている。
作者紹介
「鄭風・山有扶蘇」は『詩経・国風』に収められた作者不詳の詩である。鄭風には、男女の思慕を率直に描く作品だけでなく、戯れや軽い嗔りを含む恋歌も多い。この詩は、自然の美しい起興から、若者へのからかいへと転じることで、鄭風らしい明るく生き生きとした恋愛感情を表している。