詩経
郑风·狡童
佚名
彼狡童兮,不与我言兮。
维子之故,使我不能餐兮。
彼狡童兮,不与我食兮。
维子之故,使我不能息兮。
翻訳
あの狡い若者は、私と言葉を交わそうとしない。あなたのせいで、私は食事もできない。 あの狡い若者は、私と一緒に食べようとしない。あなたのせいで、私は安らぐこともできない。
解説
「狡童」は、恋人に冷たくされた者の恨みと焦りを歌う短い詩である。相手を「狡童」と呼ぶが、それは単なる罵りではなく、親しい関係の中での嗔りを含んでいる。言葉を交わしてくれない、一緒に食べてくれない。そのために食事もできず、安らぐこともできない。 この詩には複雑な背景や比喩はない。だからこそ、感情がまっすぐに伝わる。恋愛において、相手のわずかな冷淡さは、日常の食事や休息まで乱してしまう。 二章はほぼ同じ形だが、「言」から「食」へ、「不能餐」から「不能息」へと進むことで、心の乱れが深くなっていく。短い反復の中に、親密さを求めても得られない焦燥がよく表れている。
作者紹介
「鄭風・狡童」は『詩経・国風』に収められた作者不詳の作品である。鄭風には、男女の親しさ、怨み、戯れ、不安を短く率直に歌う作品が多い。「狡童」は、「語らない」「ともに食べない」という二つの小さな拒絶を通して、恋人に冷たくされた心の乱れを描いた簡潔な名篇である。