詩経
郑风·出其东门
佚名
出其东门,有女如云。
虽则如云,匪我思存。
缟衣綦巾,聊乐我员。
出其闉闍,有女如荼。
虽则如荼,匪我思且。
缟衣茹藘,聊可与娱。
翻訳
東の門を出ると、女たちは雲のように多い。しかし、たとえ雲のように多くても、私が思う人ではない。白い衣を着て、濃い緑の巾をつけたあの人だけが、私の心を楽しませてくれる。 外城の門を出ると、女たちは茅花のように多い。しかし、たとえ茅花のように多くても、私が思う人ではない。白い衣に茜色の飾りをつけたあの人だけが、私とともに楽しむことができる。
解説
『出其東門』は、多くの美しい人々の中で、心がただ一人に向かうことを歌った詩である。「有女如雲」「有女如荼」とあり、東門の外には多くの女性がいる。しかし、その多さは語り手の心を散らすものではなく、むしろ思う人の唯一性を際立たせる。 「虽则如云,匪我思存」「虽则如荼,匪我思且」が中心である。どれほど多くの人がいても、心にある人は別である。選択肢が多いことは、愛の揺らぎではなく、かえって一途さを示す背景となっている。 「縞衣綦巾」「縞衣茹藘」は、思う人の服飾を描く。白い衣、緑の巾、茜色の飾りが、その人を群衆の中から浮かび上がらせる。顔立ちを詳しく描かず、色と衣服によって記憶の像を作っている点が印象的である。 この詩の魅力は、外のにぎやかな世界と、内面の揺るがない思いとの対照にある。人は雲のように多くても、心はただ一人に向かっている。
作者紹介
『詩経』の「国風」は、周代各地の民歌を多く含み、作者は不明である。短い章を反復する形式によって、古代中国の感情世界を伝えている。「鄭風」には男女の相思や出会いを歌う作品が多く、城門、水辺、道などの公共空間がしばしば舞台となる。