詩経
王风·君子阳阳
佚名
君子阳阳,左执簧,右招我由房,其乐只且。
君子陶陶,左执翿,右招我由敖,其乐只且。
翻訳
あの君子は晴れやかな様子で、左手に笙の簧を持ち、右手で私を部屋から招く。なんと楽しげなことだろう。あの君子は心のびやかで、左手に舞の羽飾りを持ち、右手で私を誘って遊びに出る。なんと楽しげなことだろう。
解説
《君子陽陽》は短い詩でありながら、明るい動きに満ちている。君子は片手に楽器を持ち、もう一方の手で人を招く。次には舞の羽を手にし、遊びへと誘う。「陽陽」「陶陶」は、心がのびやかで楽しげな様子を表す語である。王風には憂いを帯びた作品が多いが、この詩には軽やかな喜びがある。理由を説明するのではなく、音楽、舞、招く手のしぐさによって、親密で明るい一瞬を見せている。
作者紹介
「王風」は『詩経・国風』の一部で、周王畿およびその周辺の歌と関わるとされる。多くは作者不詳で、先秦期の民歌や礼楽の伝統が集成されたものと考えられる。王風には、別離、役、衰えた世の憂い、個人の感情を歌う作品が多い。言葉は簡素であるが、反復と日常のイメージによって深い余韻を生んでいる。