詩経
王风·大车
佚名
大车槛槛,毳衣如菼。
岂不尔思?畏子不敢。
大车啍啍,毳衣如璊。
岂不尔思?畏子不奔。
谷则异室,死则同穴。
谓予不信,有如皦日。
翻訳
大きな車が音を立てて進む。毛皮の衣は若い荻のように青みを帯びている。どうしてあなたを思わずにいられよう。ただあなたを恐れて、あえて動けないのだ。大きな車は重々しく進み、毛皮の衣は赤い玉のようである。どうしてあなたを思わずにいられよう。ただあなたを恐れて、駆け落ちすることもできない。生きている間は別々の室にいても、死んだ後には同じ穴に葬られたい。私の誠を疑うなら、あの明るい太陽を証にしよう。
解説
《大車》は、誓いの性格をもつ激しい恋の歌である。前半では、大きな車の音と衣の色が描かれる。「槛槛」「啍啍」という響きは、外から迫る力や威儀を感じさせ、恋が何らかの制約の中にあることを暗示する。「どうしてあなたを思わずにいられよう」と言いながらも、「敢えてしない」「奔らない」と述べるところに、思いと現実の隔たりがある。最後の「生きては別室、死しては同穴」は、非常に強い誓いである。生前に結ばれなくても、死後には同じ墓に入るという決意が、明るい太陽を証として示される。抑えられた恋が、最後には荘重な誓約へと変わる。
作者紹介
「王風」は『詩経・国風』の一部で、周王畿およびその周辺の歌と関わるとされる。多くは作者不詳で、先秦期の民歌や礼楽の伝統が集成されたものと考えられる。王風には、別離、役、衰えた世の憂い、個人の感情を歌う作品が多い。言葉は簡素であるが、反復と日常のイメージによって深い余韻を生んでいる。