詩経
唐风·山有枢
佚名
山有枢,隰有榆。子有衣裳,弗曳弗娄。子有车马,弗驰弗驱。宛其死矣,他人是愉。
山有栲,隰有杻。子有廷内,弗洒弗埽。子有钟鼓,弗鼓弗考。宛其死矣,他人是保。
山有漆,隰有栗。子有酒食,何不日鼓瑟?且以喜乐,且以永日。宛其死矣,他人入室。
翻訳
山には枢の木があり、低地には榆の木がある。あなたには衣裳があるのに、着ることも引くこともしない。車馬があるのに、走らせることも御することもしない。ふいに死んでしまえば、他人がそれを楽しむだろう。山には栲の木があり、低地には杻の木がある。あなたには庭や室があるのに、掃き清めない。鐘や鼓があるのに、打ち鳴らさない。ふいに死んでしまえば、他人がそれを保つだろう。山には漆の木があり、低地には栗の木がある。あなたには酒食があるのに、なぜ日々瑟を奏でないのか。それで喜び楽しみ、長い日を過ごせばよい。ふいに死んでしまえば、他人があなたの家に入るだろう。
解説
「山有枢」は、一見すると享楽を勧める詩であるが、その底には人生の短さへの鋭い意識がある。衣裳、車馬、庭室、鐘鼓、酒食はいずれも生活や礼楽、宴のために用いられるべきものだが、持ち主はそれを使おうとしない。詩は率直に言う。死ねば、それらは他人のものになる。『蟋蟀』と同じく時間と楽しみを扱うが、こちらの語調はより急で、風刺を含んでいる。山や湿地の木々の起興は、人間の所有のはかなさを際立たせる。自然は残るが、人は突然いなくなる。ここでの楽しみは放縦ではなく、空しい所有に縛られず、生を実際に生きよという促しである。
作者紹介
『詩経』の「風」は、周代各地の歌謡に由来するものが多く、個々の作者はほとんど伝わっていない。そのため、通常は「佚名」とされる。これらの詩は、民間の歌、礼俗、労働、恋愛、婚姻、怨刺、思慕、政治的感情などを伝えている。言葉は素朴でありながら、反復、リズム、イメージによって強く整えられている。作者名を持たないからこそ、そこには一人の文人ではなく、古代社会の広い集団的経験と感情の記憶が残されている。