詩経
唐风·羔裘
佚名
羔裘豹袪,自我人居居。岂无他人?维子之故。
羔裘豹褎,自我人究究。岂无他人?维子之好。
翻訳
あなたは子羊の皮衣をまとい、豹の皮で袖口を飾っている。それなのに、私に対しては高慢でよそよそしい。世に他の人がいないわけではない。ただ、あなたとの昔からの縁があるから、私はなお思いを断てない。あなたは子羊の皮衣をまとい、豹の皮で袖を飾っている。それなのに、私に対しては冷たく厳しい。世に他の人がいないわけではない。ただ、あなたにかつて好ましいところがあったから、私は簡単には忘れられない。
解説
『羔裘』は短い詩だが、感情は単純ではない。羔羊の皮衣に豹皮の飾りをつけた姿は、相手の身分や外面的な立派さを示している。しかし、その立派な外見とは対照的に、相手の態度は「居居」「究究」と表されるように、高慢で冷たい。「岂无他人」という問いには、傷つけられた者の自尊心がある。自分には他に親しむ相手がいないわけではない。それでも「维子之故」「维子之好」と続くことで、過去の縁や相手のかつてのよさが、なお心を引き止めていることが分かる。この詩は、愛情か怨みかという単純な二分法ではなく、冷たくされながらも昔の情を忘れられない心の複雑さを描いている。
作者紹介
『唐風・羔裘』は『詩経』に収められた無名の詩である。伝統的には、民を顧みない在位者への批判として読まれてきたが、人間関係の中で冷たくされた者の怨情として読むこともできる。『詩経』では衣服や装飾が人物の身分や性格を示すことが多く、この詩でも華やかな羔裘と豹皮の飾りが、相手の内面的な冷淡さを際立たせている。