詩経

考槃

Kǎo pán

佚名

Yì míng

Kǎo pán zài jiàn, shuò rén zhī kuān.

Dú mèi wù yán, yǒng shǐ fú xuān.

Kǎo pán zài ē, shuò rén zhī kē.

Dú mèi wù gē, yǒng shǐ fú guò.

Kǎo pán zài lù, shuò rén zhī zhóu.

Dú mèi wù sù, yǒng shǐ fú gào.


翻訳

谷川のほとりに隠れ家を構え、その大いなる人はゆったりと暮らしている。 ひとり眠り、目覚めては自ら語り、いつまでもこの暮らしを忘れまいと誓う。 丘のほとりに隠れ家を構え、その大いなる人は安らかに暮らしている。 ひとり眠り、目覚めては歌い、ここを去るまいと誓う。 高みに隠れ家を構え、その大いなる人は車軸のように堅く身を保つ。 ひとり眠り、目覚めてもそこに宿り、自分の思いを世に告げまいと誓う。

解説

「考槃」は、隠者の歌として読まれることが多い作品である。「涧」「阿」「陆」という三つの場所は、谷、丘、高地へと変化し、世俗から離れて自然の中へ入っていく空間を形づくっている。「考槃」の意味には諸説があるが、いずれにしても、ここに描かれるのは喧騒を避け、自然の中で自らの場所を得た人の姿である。 詩中の「碩人」は、単に体格の大きな人ではなく、精神の大きさ、徳のある人物を含意する。「寛」「薖」「軸」という語は、ゆったりとした心、自足、堅固な態度を示している。彼はひとり眠り、目覚めては語り、歌い、そこに宿る。孤独でありながら、その孤独は欠落ではなく、自ら選んだ静かな自由である。 最後の「忘れない」「越えない」「告げない」という誓いは、世の評価から離れ、自分の生き方を守る決意を表す。「考槃」は激しい感情を語る詩ではないが、安らぎと堅さを併せ持つ。『詩経』の中にある、早い時期の隠逸精神を感じさせる作品である。

作者紹介

「考槃」は『詩経・衛風』に属する作者不詳の作品である。衛風には恋愛、礼俗、社会批判、個人感情を歌う作品が多いが、「考槃」はその中でも隠逸の気配を強く持つ。作者は伝わらないものの、この詩は後世において、世俗から離れ、自らの生を守る古典的な精神を考える手がかりとなってきた。