詩経
河广
佚名
Shuí wèi Sòng yuǎn? Qì yú wàng zhī.
Shuí wèi Sòng yuǎn? Céng bù chóng zhāo.
翻訳
誰が河は広いと言うのか。一本の葦でも渡れるほどだ。 誰が宋は遠いと言うのか。爪先立てば見えるではないか。 誰が河は広いと言うのか。小舟さえ入らぬほどだ。 誰が宋は遠いと言うのか。一朝もかからず着けるではないか。
解説
「河広」は非常に短い詩であるが、思慕と距離の緊張が強く表れている。「誰が河は広いと言うのか」「誰が宋は遠いと言うのか」という反問は、距離を否定しているように見える。しかし実際には、その距離がどれほど深く感じられているかを示している。河は広く、宋は遠い。だが、思いの強さが現実の距離を縮めてしまうのである。 「一葦杭之」は、現実的な渡河の方法ではなく、帰りたい心の想像である。爪先立てば見える、朝のうちに着く、と言うのも同じで、思いが言葉の尺度を変えている。誇張でありながら、そこには切実な真実がある。 この詩は具体的な事情を多く語らない。けれども、此岸に残された人の心が、すでに彼方へ渡っていることはよく分かる。短い反復と問いかけだけで、望郷や思国の情を明るく鋭く表した作品である。
作者紹介
「河広」は『詩経・衛風』に属する作者不詳の作品である。伝統的には宋の地への思いと結びつけて読まれ、衛に嫁いだ女性が宋を懐かしむ歌とも解される。衛風には水、道、遠方を通して離別と望郷を表す作品が多く、「河広」はその中でも短く強い印象を残す一篇である。