古典散文名篇
送董邵南游河北序
燕、赵古称多感慨悲歌之士。
董邵南举进士,连不得志于有司,怀抱利器,欲就试于此土。
吾知其感焉。
董生勉乎哉!
夫以子之不遇时,苟慕义于燕、赵之间,吾疑乎其有合也。
董生勉乎哉!
吾因之有所遇矣,子其行乎?
翻訳
燕・趙の地は、古くから感慨深く悲壮な歌をうたう士が多い場所として知られている。董邵南は進士に挙げられたが、官吏たちに認められず、たびたび志を得ることができなかった。胸に優れた才器を抱き、その地に行って自分を試そうとしている。私は彼の心に深い感慨があることを知っている。 董生よ、努めよ。あなたが時に遇わず、もし燕・趙の間に義を慕って行くなら、そこにあなたと合うものがあるのではないかと思う。 董生よ、努めよ。私もこのことによって感じるところがあった。さあ、行くがよい。
解説
『送董邵南游河北序』は、董邵南を河北へ送り出す短い送序である。文章は短いが、友人の不遇への同情と、才能ある士人が時に遇わないことへの感慨がこめられている。 燕趙は、古来、豪侠、慷慨、悲歌のイメージを帯びる地域である。そこへ向かう董邵南の旅は、単なる移動ではなく、自分の不平と才を受けとめる場所を求める旅として描かれる。 「懐抱利器」は、才能を抱えながら使われない士人の姿を示す。二度の「董生勉乎哉」は、励ましであると同時に深い嘆きでもある。
作者紹介
韓愈は唐代の古文運動を代表する文学者で、字は退之、韓昌黎とも呼ばれる。彼の送序は単なる儀礼文ではなく、士人の不遇や時代への感慨をこめることが多い。『送董邵南游河北序』は、その簡潔で力強い一例である。