古典散文名篇
读孟尝君传
世皆称孟尝君能得士,士以故归之,而卒赖其力以脱于虎豹之秦。
嗟乎!孟尝君特鸡鸣狗盗之雄耳,岂足以言得士?
不然,擅齐之强,得一士焉,宜可以南面而制秦,尚何取鸡鸣狗盗之力哉?
夫鸡鸣狗盗之出其门,此士之所以不至也。
翻訳
世の人々は皆、孟嘗君は士を得ることができたと称えている。士たちはそのために彼に帰し、ついにはその力によって、虎豹のように恐ろしい秦から脱することができたと言う。 ああ、孟嘗君はただ鶏鳴狗盗の徒の中の雄にすぎない。どうして士を得たと言うに足りようか。 そうでなければ、斉の強大な力をほしいままにし、真の士を一人でも得たなら、南面して秦を制することができたはずである。どうしてなお鶏鳴狗盗の力を借りる必要があっただろうか。 鶏鳴狗盗の徒がその門から出たことこそ、真の士がそこへ至らなかった理由なのである。
解説
『読孟嘗君伝』は、きわめて短いが、非常に鋭い翻案の文章である。伝統的には、孟嘗君は多くの食客を養い、士を得た人物として称えられてきた。秦から逃れる時、鶏の鳴きまねをする者や盗みをする者が役に立ったという話も、その度量の広さを示す逸話として語られてきた。王安石は、この評価を根本から疑う。 王安石が問題にするのは、「危機を脱したこと」と「真に士を得たこと」は別であるという点である。孟嘗君は確かに門客の力で秦を脱した。しかしそれは、小さな技巧に頼っただけであり、国家を動かし、秦を制するような真の人材を得たことにはならない。もし本当に一人の士を得ていたなら、斉の強さをもって秦を制することができたはずであり、鶏鳴狗盗の力に頼る必要はなかった。 最後の「此士之所以不至也」は、文章全体の核心である。王安石は、鶏鳴狗盗の徒がいること自体を単に嘲っているのではない。そうした低い次元の人々が門下に集まる環境では、真の士は来ないと言っているのである。人材の質は、その人物の志と判断を映し出す。 この文章には、王安石らしい政治的な視点がある。彼は、面白い逸話や門客の多さに惑わされず、その人物が本当に国家の大局に役立つ人材を得たかどうかを見る。短いながらも、人材を見分ける基準を鋭く問う名文である。
作者紹介
王安石は北宋の政治家・思想家・文学者で、字は介甫、号は半山、臨川の人。唐宋八大家の一人である。その文章は簡潔で鋭く、歴史人物への従来の評価を問い直す力を持つ。『読孟嘗君伝』では、孟嘗君を称える伝統的な見方を退け、真の人材とは国家の大事を担える者であるという政治的基準を示している。